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近藤春雄著「春遠からじ」を読んで 

昭和26年12月15日偕成者発行の少女小説です。
簡単にあらすじを説明すると、パンジィ・トリオと呼ばれる歌の上手な仲良し3人組が、いったんばらばらになるが、いろいろあって再び仲良くなるという話。

登場人物
千秋澄江:パンジィ・トリオの一人。中等科2年。母をなくし、父も満州で行方不明。伯母と兄・清一との3人暮らし。
芳賀光子:パンジィ・トリオの一人。中等科2年。父親は金持ちで関西弁を話す。
大逹ひろ子:パンジィ・トリオの一人。高等科で澄江の3年先輩に当たる。母と死別し、継母と暮らしていたが、家出して田舎のレビュー劇団に入る。父親は警察に捕まる。
牧野美登里:当時一流の女流声楽家で澄江とひろ子の師匠。
葛原美佐代:澄江たちの学校の音楽教師。光子を個人的に指導している。
藤島栄枝(さかえ):澄江の友達。ひょうきんでお茶目なためみんなから「サザエさん」と呼ばれる。
軽部:ひろ子の小学校の時の先輩で劇団の楽長。
成瀬明:栄枝の知り合いの音楽評論家。


主人公の澄江は典型的な優等生で声楽の才能もある。父親は満州で行方不明になっているという設定がある。途中、父親の行方の手ががりになりそうな話もちょっと出てくるんだけど、最後まで行方不明のままで、なんか中途半端な設定だな。
光子は、ストーリー上、澄江と敵対するような関係になるが、それはすべて悪い大人たち(葛原先生や悪徳レコード会社)が仕組んだことで、光子自身に悪意はない。そのことは澄江もわかっており、光子に同情さえする。ただ、本人は、大人たちからちやほやされて舞い上がってた自分を反省する。
ひろ子は他の二人より年上で、一番行動力がある。いきなり家出して、田舎のレビュー劇団に入るとか、ずいぶん大胆ですね。劇団の楽長・軽部とは小学校のころの先輩で、いろいろ世話になる。はっきりとは描写されてないが、この二人なんとなく好きあってる感じがしますね。かたく握手したり、肩を抱いたりといった描写がある。戦前の作品ではありえない描写だ。この作品は戦後の作品なので、少しずつ恋愛要素も取り入れることができるようになったのか。
ところでひろ子は、劇団には自立するために入ったはずなんだけど、最終的には契約金を光子の両親に出してもらい、劇団を辞めて、元の学校に戻る。この辺のひろ子の心理がいまいちよくわからない。無理やり、パンジィ・トリオを元の鞘に収めるための展開か。最後には父親も都合よく改心したみたいだし、これでよかったのだろう。

全体的にはよくある平凡な少女小説でいまいち。
ひろ子の父親が警察に捕まった理由が最後まで説明されてなかったり、澄江の父親が行方不明のままだったり、いろいろ中途半端な部分が気になった。
それほど面白い話ではないが、音楽がテーマということで、スイート・プリキュアの3人をイメージしながら読むと、それなりに楽しめる。つまり、澄江が奏、ひろ子が響、光子がエレンという感じ。
[2011/09/16 22:28] 読書 | TB(0) | CM(0)

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