

「助けて・・・・・・」
という叫び声も、若い子分がいそいでかけた、さるぐつわの中で、消えました。
さるぐつわをかけられ手と足をしばられ・・・・・・ロイド眼鏡はそんな洋子をぽんとけっとばして、
「さ、うんとさわぐがいいや。朝までせいぜい泣くがいいぜ」
(150ページ)
昭和28年初版ポプラ社発行の少女小説。私が古本屋で入手したのは昭和32年発行の第5版でした。それなりに版を重ねているようだ。
著者の北條誠はかなり著名な作家らしいですね。私はぜんぜん知りませんが。
登場人物由紀子:心優しい少女。
由紀子の母:優しい母だが、実は継母。
由紀子の父:入院中。
洋子:クラスの女王で由紀子をいじめる意地悪な少女。
早苗と晴美:由紀子の友達。いつも二人セットで登場。
ピノキオじいさん:家出した由紀子の面倒を見るやさしいおじいさん。ピノキオのおもちゃを作ってる。
ロイド眼鏡の男:由紀子と洋子を拉致監禁した悪漢たちの一人。
ましらの万次:由紀子と洋子を拉致監禁した悪漢たちの中で唯一名前がある悪者。
物語の前半は、転校してきたばかりの由紀子が洋子に一方的にいじめられるというありがちな展開でちょっと退屈だが、由紀子と洋子が家出したあたりから少し面白くなる。
印象的だったのは少女が悪者たちに捕まり、縛られて監禁されるシーン。しかも2回も。
最初は、洋子と由紀子の二人一緒に、2回目は由紀子一人が縛られるのだが、どちらも挿絵になってる。わざわざこのシーンを選んで挿絵にしたのは画家の趣味か?
(187ページ、267ページ)
ちなみに、由紀子が家出した直接の原因は、泥棒の疑いをかけられたり、勝手に修学旅行の申し込みをしてお金を払ったことが母親にばれて、怒られるのが怖かったからだ。もともと母親が継母だと判明したため、実は自分は母から愛されてないのではないかという思いもあって家出したのだろう。
一方、洋子の方は由紀子に対する自分の悪事が母親にばれそうになったので、後先考えずに家を飛び出してしまった。
家出後の展開を簡単に説明すると
由紀子は散々苦労した後、行き倒れてるところを親切なピノキオじいさんに助けられる。しかし、おじいさんと一緒に住むおばあさんは極悪ばばあで、ここでもいじめられる由紀子。
一方、洋子の方は、ひょんなことから悪党たちに捕まり拉致監禁される。このとき洋子は改心する。
さらにその後、偶然由紀子も捕まり、二人は同じ場所に監禁される。
改心した洋子は、自分がおとりになって由紀子を逃がしてやる。味方になった洋子は頼もしい。
由紀子は交番に駆け込み、悪党たちは捕らえられる。ましらの万次を除いて・・・。
これで、めでたしめでたしで終わるのかと思ったら、由紀子は家に帰らず、ピノキオじいさんの元へ戻る。
その後もいろいろあって、またしてもましらの万次に捕まり拉致監禁されるが、母親と再会し、最後はハッピーエンドで終わる。
たびたび由紀子が家に戻るチャンスがあるのに、自らそれを拒む由紀子が読んでいてもどかしい。母親は心配のあまり半狂乱になって行方を捜しているのに。どうも由紀子はいじけ虫で、自分は家にはもう帰れないと勝手に思い込んでるようだ。困った子です。